株式会社ラクーンホールディングス

小方の気まぐれ日記
小方の気まぐれ日記 2006年
顧客満足向上を戦略の中心とした中長期計画を発表したので、その具体策の第一弾として会員小売店様懇親会を開くことになった。ちなみにラクーンの会員小売店のみなさんは、若い人や創業間もない人が多くそういう意味で全員がベンチャー起業家だ。4万人にも及ぶ起業家の大集団なのだ。我々が上場できたのは、従業員や関係者の努力もあるが、なんと言っても会員小売店の存在とそこからいただいた応援こそが最大の理由だと思う。

我々が互いにベンチャーであり、互いに起業家であり、古くてよくないものがあれば新しくいいものに作り変えていこうという共通の目標意識があった。インターネットは完全ではないが、この必ずしも完全ではない“道具”に互いに望みを託した。起業のチャンス、事業拡大の切り札、もしくは生き残りの秘策として、我々と会員小売店の共通の課題がインターネットだったのだ。

これを使ったビジネスをやったら儲かるなどという安易なものでは決して無かったのだと私は思う。

そんな会員小売店の1人1人と会って話が出来ない辛さについて色々考えていたら、従業員からせめて任意で数人の会員様だけでも会社に招待し色々要望を伺ってみたいというアイディアが出てきた。

そうだ、それをやろう。

全国から任意に声を掛けさせていただいた。今回はまず10店舗ほどと思ったが、なかなか都合が合わずに、結果4店舗のオーナに参加いただいた。各部署から数人ずつが参加し、ミーティング&懇親会を開催した。現状に対する要望や感想など議題は多岐にわたった。ミーティングの後、食事会に流れここでも遅くまでお客様を取り囲み会話が続いた。全会員で集まることは出来ないが、せめて数人ずつでもお会いしていただく意見を参考にし続けよう。やってみて思ったことだが、これは明らかにお客様のためというより我々のための時間だった。参加したメンバーたちはとてもやりがいと目標意識を持ったからだ。後日、各部門よりお客様の意見をもとにまとめられた改善提案などが数十枚、経営企画部門に提出された。

さあ、今度はそれをやろう。
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全国で講演会を行うことにした。社内のスタッフたちと相談して決まった方針の一環である。会社主催のセミナーだと、呼べる人には限界がありコストも掛かる。その点、公的団体である商工会議所や商工会連合会主催の講演会にはメリットは大きい。そこで民間は避け公的団体に絞って受けることにした。元々公的団 体からの講演依頼はなぜか多いので、その点好都合だった。
特にインターネットを使った事業の場合、利用者のほとんどは地方に存在する。
ITというのは無機質なのが難点だ。一人一人のお客様に会うことが不可能なのだ。
そのような理由から、今年一杯、商工会議所や商工会連合会に限って講演会を受けることにした。回を重ねるごとに会員小売店様もちらほら参加いただき、貴重な交流のチャンスとなった。行政の予算によってタイミングが決まるので集中してしまうのが難点だが、今年1年間で、1000人を超える経営者の前で話す事になる。このことに意味が無いわけがない。
(株主の方は、IR担当に電話を頂ければお一人一冊に限り無料で郵送します。先着100名でお願いします)
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株価が下がっている。通常、経営を行うに際しては短期的な株価は気にしすぎるべきではない。したがって毎日何度も株価を見たりはしないようにしている。しかしながら、中長期の株価は大いに気にするべきだ。何と言っても私自身も大株主であるし、殆どの従業員たちだって株を持っている。株主と経営の利害は一致しないと人もいるが、でも一致させるような努力はするべきだ。

この時点において私が、個人的に適正と思った株価より実際値は低かった。会社の企業価値を上げて行くためにはなにをするべきか?
上場後1年間の予想は発表しているが、その後の中長期経営計画はまだ発表していなかった。ぎりぎりまで経営環境を考慮して舵を切りたいからだ。

調達した8億円(の一部)を予算に回し、対策に準備する必要を感じた。
ライバルが出現したらどうするかは、概ね頭にあるが軍資金は多いに越したことはない。

株主の問合せの中にも、短期的な視点に立たず、中長期のてこ入れをするべきだ。特にこの業種は“規模の大きさ”が顧客満足に直結する。出品商品が多ければ、会員小売店は増える。会員小売店が増えればよく売れて出展企業は増える、、という具合だ。だからマーケットの拡大を徹底して行うべきだという理論だ。

専門家たちの所にも、近々ライバルとなる企業が複数現れるとの情報が寄せられているようだった。ラクーンとインフォマートの上場により、くすぶっていたBtoBへの可能性が一気に注目を浴びる可能性が高まっている。BtoBの例がなかったがために予算を割けないでいた企業各社もこの2社を例に上げ予算の確保に動いている。
ビジネスモデル自体はシンプルだが、弊社はBtoBに関して圧倒的なノウハウを持っている。この時期にこそマーケットの拡大を行い先駆者としての立場を確固たるものにしておく必要があり、またそのことは短期的には誤解を得るリスクはあるものの中長期には必ず得に繋がるだろうと。

私も同意見だった。しかし、それを実行に移す勇気が湧かない。インサイダーの問題もあるので、本音を相談できる相手は限られていた。メインの事業である「スーパーデリバリー」は順調に最高売上を記録し続けていたが、この時期に誤解を招くことは避けたいと思った。

経営戦略会議での議論が続いた。
せっかく市場に出て、8億円ものお金を調達して、マーケット拡大、ライバル対策や顧客満足の向上、システムの増強に使えないのは何のための上場か?
いやいや、そうだとしても発表している1年以内の計画が済んでからやるべきだ。上場後1年間はお約束の穏やか経営だ。いや、新興市場の企業が急展開なのは当然ではないか?短期的視点に立つべきではない。ITをやっている以上、1年間の休憩は死を意味する。。などなど。

私は決意した。上場で調達した資金を活用し、将来の企業価値を上げるためマーケット拡大を早期に行うのだ。この投資が中長期的に企業価値を上げる自信はある。

この計画の実行にはどうしても当面の赤字転落は避けられないため、投資家の誤解を招く可能性がある。私は、今まで避けてきた中長期計画の発表を行うことに した。当面の赤字転落を招く以上は、中長期計画を発表し、投資家に対する説明責任を果たす必要がある。
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全国で講演会を行うことにした。社内のスタッフたちと相談して決まった方針の一環である。会社主催のセミナーだと、呼べる人には限界がありコストも掛かる。その点、公的団体である商工会議所や商工会連合会主催の講演会にはメリットは大きい。そこで民間は避け公的団体に絞って受けることにした。元々公的団 体からの講演依頼はなぜか多いので、その点好都合だった。
特にインターネットを使った事業の場合、利用者のほとんどは地方に存在する。
ITというのは無機質なのが難点だ。一人一人のお客様に会うことが不可能なのだ。
そのような理由から、今年一杯、商工会議所や商工会連合会に限って講演会を受けることにした。回を重ねるごとに会員小売店様もちらほら参加いただき、貴重な交流のチャンスとなった。行政の予算によってタイミングが決まるので集中してしまうのが難点だが、今年1年間で、1000人を超える経営者の前で話す事になる。このことに意味が無いわけがない。
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上場後初の株主総会だ。初めてだけにとても緊張した。初値が高かっただけに、この時点で損を出している人も存在する。特にベンチャーに対する不信感は広がっており、「なにかごまかそうとしているのではないのか」、「インチキをやっていないか」、そんな意見もぶつけられる。

1つ1つ私なりに誠意を込めて説明していった。ある株主が言った。「ベンチャーというのはどうもインチキくさいところがあって、適当なことをやっているようであればガツンと言ってやろうと思って今日来た、でも話を色々聞いているとよく分かった、ちゃんとやっているじゃないか」と。嬉しかった。予定にはなかったが出口に立って1人1人に名刺を渡してしまった。終了後、私は安堵でなく感動をしていた。

ある人が言った言葉を思い出した。「株主は敵ではなくて味方だ」会社の株を買ってくれるんだから敵であるわけがない。当たり前といえば当たり前の話だ。だが今、改めて思った。この人たちに後悔をさせてはいけない。
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上場してから、いくつかの人材紹介会社の人が営業に来たのだが、彼らの言う事が少し気になった。「上場すると、経営者の皆さんがおっしゃるのは、上場後の会社を運営できる優秀なスタッフがいないということです。創業時は元気とやる気で何とかなったかも知れませんが、上場後に必要なのは立派なキャリアを持っていて社長の命令を確実にこなすエリートたちです。上場後は、そういう求人も思い通りに来ます。ぜひ、それを弊社に任せませんか?」とのことだ。「う〜ん」なんかしっくり来ない。

いくつかのベンチャー企業は上場後、外部より“それっぽい”役員をたくさん採用した。
そして、創業メンバーたちはまるで押し出されたかのようにいなくなっていった。特にビジネスモデルの根幹を作ったようなメンバーを失った場合、独自のモデルを作り続ける創造力を失うのだから、その後はどこかの誰かがやっていることを真似するしかない。私は優秀な人間が居れば外部からでも採用はするが、だからといってこの会社を上場させたよりも優秀な人間が、そうそう簡単に居るとは思えない。何と言っても彼らは“経験”したのだ。
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過去においてラクーンを退職した従業員は少なくない。特に2001年から2005年はあまりにハードだったので辞める人間を責める人間もいなかった。辞める人間を見て「あっちの方が普通だ」と言ったことがある。言われた部下は笑っていた。この当時は極端に給料が少なく、仕事もハードで、やってもやってもゴールは遥か彼方であり、残る人間の方が正常ではなかった。しかし、辞めた人間がみな弱気だったのかというとそうではない。ベンチャーに集まる人間というのはそもそも安定志向ではありえず、挑戦する機会を見つければそれぞれの道を歩いていくタイプが多いのだ。もちろん独立も少なくない。

だからというわけでもないが、創業以来退職者はその理由の如何にかかわらず応援するのが慣わしとなっている。人の門出を祝わないのは間違いだ。“立つ鳥、これを応援する”が掟なのだ。元役員たちもみな連携を取り続けている。

ある日ラクーンを退職した、いわゆる元ラクーンの連中が集まって飲み会が行われるという。呼ばれたので(これが重要なのだが、、)お金を多めに持って会社の近くの安居酒屋に出かけていった。なんとみんなで上場のお祝いだという。20名ほど集まっていた。しかし、よくもこんなに辞めたものだ。我ながら呆れてものも言えない。辞めたのにお祝いをしてくれるなんて、正直感動した。挨拶にこう言った。

「色んな掲示板に悪口を書かないでくれてありがとう!」

大爆笑された。現職たちも次々に合流し宴会は長々と続いた。

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新入社員たちが入ってきた。6名(+中途3名の合計9名)もいたので、今年は1泊2日の新入社員研修を行った。講師は、新設された人事担当と私を含む役員たちだ。
手作りの教材ゆえ、お世辞にも立派な研修とは言えないが、少なくとも新入社員たちは役員と話がしやすいという環境といくつかのいい思い出を手に入れたようだった。

組織においてもっとも重要なのは信頼関係だと思う。信頼関係は、手間と時間を掛けてじっくり手に入れるものだと思う。新しい出会いなのであれば、また新たにそういう努力をしなくてはいけない。これに関してばかりは“手っ取り早い方法”は見つからない。
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上場した。

いくつかのセレモニーが一通り終わった後、夜7時ぐらいに業務を終えて倉庫にてみんなで乾杯した。株主やら関係者などから驚くほどの花やお酒をいただいたからだ。今日ぐらいは飲めという意味か。

夜寝る時にベッドの中でゆっくりとこの数年を振り返っていた。上場して得たもの、、それが何なのか、まだにはっきりと分からない。でも失ってはいけないものがあると思った。

それは、“理想”だ。

会社が上場していようとしていまいと大きかろうと小さかろうと理想のない経営だけはしたくない。一生涯言いたくない言葉は、「こんなはずじゃなかった」である。

過去に私を信じた、株主、客、部下はとりあえず今日は笑った。
しかしその数は一気に何倍にも増えた。この全員を何年後かに笑わせることの大変さを分かっていた。そのことが、覚悟と緊張をもたらす。そう、私にとっても部下にとっても大切なのは信じてくれる人を後悔させないことだ。
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≪第2創業期 2006年 2007年≫