株式会社ラクーンホールディングス

小方の気まぐれ日記
小方の気まぐれ日記 2010年
トラスト&グロースという会社が子会社になった。この会社は元々弊社の取引先で、スーパーデリバリーの決済部分の業務を委託していた会社だ。先方は業務の拡張のための安定した株主を探していたようで、提案された案件だった。異なる社風の会社が一緒になるということに少なからず不安はある。ただ、事前の調査報告に面白い記述があった。管理部の女性スタッフが書き加えた1行だ。「社内の人間関係がとても良好で、うちと社風が似ている」私は、GOサインを出した。

その後、、、、(4ヵ月後)

その後、我々はすっかり仲良くなった。ラクーンとT&Gは、一緒に飲みに行ったり釣りに行ったりと交流も増えてきた。業務上の相互応援もどんどん進んでいる。M&Aって、色々大変そうなイメージもあったが、必ずしもそうではないのだと分かった気がした。
お客様の購入状況などを、部下から報告を受けていて意外なことに気が付いた。この2、3年でショッピングセンター内のお客様が増えているのだ。それも、仕入が月100万円超の人が増えている。私は不思議に思った。ショッピングセンターのビジネスは伸び悩んでいるはずだからだ。調べても、入店しているショッピングセンターに特に変わった点は見られない。それどころか、地方のちょっと寂れた店舗が目立つ。

これは気になる。そう思って何店舗かを訪問してみることにした。驚いたのは、街もショッピングセンターも閑散としているのに、会員の店舗だけは賑わっていたことだ。詳しく店主に事情を聞いてみると、当然ですよという答えが返ってきた。店主の話は以下の通りである。

隣左右の周りのお店は、相変わらず地域の問屋から仕入れているお店が多い。問屋が悪いわけではないが、この数年で数が激減しており、そこからの仕入だけではお店が陳腐化してしまう。また、問屋はその業態の特性上、その価値観で商品を絞り込んでおり、全体の一部しか扱っていない。だから従来の問屋と付き合う限り“たくさんの中から選ぶ”ということは出来ないという。また、保守的なセンスで商品選定されるケースも少なくなく、どうしても無難な商品や地味なものがメインとなり、流行のものや、そういうデザインのものは入らない。スーパーデリバリーだと数十万種類から選べてそれが数日で届くわけだから、それを使えば品ぞろえで周囲を圧倒できるのは当然だという。

気になるのは、メーカーの直営店だ。これはどうだろうと聞いてみたが、これもさほど気になる存在ではないという。彼から見ると、直営店は仕入先を1社に限定された店舗なので、それはハンディだという。急激な市場の変化や客の好みに対応し、通いたくなる魅力のあるお店を作ろうと思うと、仕入先を1社に限定することは大きな足かせなのだという。数十のメーカーから、幅広く仕入れたりするから1週間後に来た客さえ退屈はさせないのだという。確かにお店に行ってみても玉手箱をひっくり返したみたいな状態。とても楽しそうな空間を作ることに成功していた。1時間居ても退屈しないだろう。

でも、なぜ地方のショッピングセンターなのだろう?聞いてみると、またまたなるほどと思う答えが返ってきた。駐車場もあり、改装のコストが最小限で済むショッピングセンターは景気のいい時は高くて入れなかった。しかし、かつてのようなにぎわいは減り、かなり有利な条件で入れるところが増えているというのだ。少しでも集客力のありそうな店舗は、先方から熱心に誘われるのだそうだ。確かに私が訪問した会員の店舗を見ていて、彼らが集客の要素になっているのが良く分かった。通って楽しいお店が作れたら、場所はどこでも客は来るのだそうだ。なるほど、この方法だと地方の方が都合がいい。なぜなら他に楽しめる場所が少ないからだ。近隣には大手のお店があるのだが、大手はアイテムを極端なまでに絞り込んでおり、“さっさと用事を済ませるところ”になりつつある。ぶらぶらとウインドウショッピングを楽しむ場所ではなくなりつつある。

このような成功を収めている店舗はすでに、複数店舗化を始めている。訪問した会員も3ヵ月後には2号店を開いたし、ほかの店舗でも3号店、4号店が珍しくはない。興味深かったのは、彼らのほとんどが、たとえ複数店舗化しても本部一括仕入によるディスカウントを希望していないという点だ。試しに聞いてみたら案の定あり得ないという答えが返ってきた。そうすると仕入れ価格は幾らか下がるかもしれないが、場所や客を見て店長の判断で仕入れるという「成功のための最も重要な要素」が機能しなくなるという。ディスカウントしなくて良いので私は助かるが、それ以上に「小規模店舗のセレクトショップ化」がしっかりと進んでいることの方が嬉しかった。

このようなお店は会員の中で急激に増えつつある。私がもっとも注目する最近の変化である。
うちの会社は小規模旅行が多い。恐らくそれは私の旅行好きが関係している。
自由参加で、毎回少人数なので参加した人はとても仲良くなる。
最初は興味なさそうだった部長たちも、最近ではこの小旅行により“得られるもの”の価値を認めつつあるようで、新しく入社した人には出来るだけ参加するようにと伝えているようだ。それに合わせて入社一年以内は格安で参加できるよう料金設定もなされている。

私はこの小旅行で得られるものを部門長たちにも実感として味わってもらおうと考え、今年は各行事を何人かの部門長たちに振り分けてそれぞれの幹事をお願いした。
  • 1月 伊勢神宮参り
  • 2月 万座スキー&温泉
  • 4月 角館枝垂れ桜&乳頭温泉
  • 6月 宮ヶ瀬湖キャンプ
  • 7月 沖縄&離島
  • 9月 伊豆雲見温泉海水浴場
  • 10月 妙高高原、紅葉と秘湯燕温泉
旅行で一番大切なのは楽しいことである。楽しくないと誰も来なくなる。楽しい旅行を企画するにはそれなりの経験と度量が必要で、若い管理職がこれにはぴったりだ。
東京のど真ん中で一日中オフィスに居るわけで、我々は時々地方に出かけて地域ごとのリズムを体感するのも悪くない。また、日本人として四季を味わうことも忘れてはならない。
私は沖縄を担当した。沖縄は今年で7年目になるが、新しいメンバーと最高の思い出がまたいくつか出来た。
不景気の影響か、ネットショップの入会希望が増えている。週末起業や副業希望者が増えているのだ。しかしながら、スーパーデリバリーではこれらの方々は入会禁止となっている。理由は以下の通りだ。
  1. 1. 過去の経験からも、そのほとんどが1年後に継続していない。
  2. 2. 発注が細かく、販売側の負担が大きい。
  3. 3. 感覚が素人で、販売側に混乱を与える。
  4. 4. 一貫性のないディスカウントを乱発し、既存の会員に混乱を与える。
などだ。我々の知っているネットショップ(BtoC)の実態は、世間で言われているものとかなり異なっている。参入障壁が低いせいか、成功する確率は年々減っていて、この2、3年利益を出して継続する人はほとんど見かけなくなってしまった。よほどセンスのいい人であっても、経験と実績を持っている人をライバルに、それに勝つのは容易ではない。2009年から2010年にかけては、大幅に売上を伸ばして倒産したネットショップが多数存在した。なぜ、売上を伸ばして倒産しなくてはならないのか不思議でしかたがない。

弊社の購入会員には、すでに4000社ものネットショップ企業が存在するため、新規のネットショップへの参加基準を大幅に強め既存顧客を応援する方針とした。
この1年、主力事業はスーパーデリバリー1本だ。現在はこのBtoBの事業に集中している。主力事業を揺るぎのないものにするのが当面の課題というわけだ。

これを実現するために、強化しているのが質の向上である。この質とは、出展企業も会員小売店も、商材もである。審査を強化し絞り込みをかけ、差別化を実現しようというわけだ。量は多い方がいいと思っている人もいるかもしれないが、我々の経験上、それはノーである。また、やる気のない企業が参加し続けていると、とっくに完売した商品が掲載されていて、発注したところ在庫がなかったなんてことも起きてくる。だから、買う側にとってのポイントは参加している企業の真剣さにあるのだ。スーパーデリバリーは全企業が有料であるため、真剣でない企業は必然的に残りえない。従来の方法を改め、品質、評判、イメージ、さらには企業そのものの「やる気度」も審査のポイントとして見るようにしている。改善改良を行い成長し続けようとする企業のみの参加となるわけだ。一部の投資家から、そのようなことをしたら会費が減るではないかと言われた。しかし、企業の成長は顧客の満足に比例する。我々が伸ばすべきものは飽くまでも売上なのだ。これらの結果、月々の出展企業は半分以下となったが売上は伸び続け、この月、過去最高となった。
スーパーデリバリーを始めて、9年が過ぎた。長い間やっていると出展企業各社にもeコマースの達人が多数存在する。彼らは、ある意味我々以上の達人である。我々はサイトを主催する側だが、使う側の気持ちを100%理解するのは不可能だからだ。したがって、彼らは使う側の達人なのだ。

新聞などの記事によると、メーカー経営者の最大の関心事は、現在「eコマース」であるとのこと。eコマースの達人は経営者にとっても宝物なのだ。彼らは、1人で年間1億円以上売る。恐ろしいのは、その人が転職すると売上まで転職先に移動してしまうことだ。これには私もびっくりするが、それほど担当のスキルが売上に関係しているということだ。

メーカーの経営者から、「どんな人を採用すればいいのですか?」とよく聞かれるが、そんな時私は、「それが、好きな人を採ることです」と答える。
リーマンショック以降の景気の冷え込みに加え、ファストファッションの台頭で特にアパレル業界の価格低下が加速している。大手の小売業が、どこもかしこもバーゲンだらけなので、メーカー各社は利益の確保が大変だ。

そのような状況が関係あるのかどうか定かではないが、百貨店やGMS(大型ショッピングセンター)へは期待せず、卸しはスーパーデリバリーのみという企業もちらほら現れてきた。社歴の若い小さな企業が多い。大手小売各社がアイテムを絞り込んでいることにも関係があるのかもしれない。スーパーデリバリーで販売するには手数料が発生するが、それは一般的な販管費よりも安く、そして販売する相手との距離に関係せず全国一律である。

景気が悪化すると商圏を絞り込み、生き残り策を取るメーカーが少なくない。
アパレル・雑貨の場合は、産地と消費地の距離に値段が関係しないので広域に販売しようとすればするほど販管費は増え、商品は価格競争力を失う。だから不景気の時に、遠方の販路を切り捨てることによって生き残りを掛けるメーカーが少なくないのだ。

もちろん、私はこれをもったいないと思う。こんな時こそネットでしょう、と素直に思う。
いよいよ新しい年の始まりだ。
昨年は不景気で、日本中にワクワク感の少ない年だった。
せめて今年こそは夢のある年にしたいものだ。

ラクーンには、数ヶ月に一度新しいメンバーが入社するが、秋から暮れにかけて6名の社員が入社し、1月にはまた4名が加わる。採用はこれでひと段落する予定で、大量採用の予定は 無い。新しいメンバーは新たな期待を持ってきてくれる。

いま経営者に必要なのは、笑うこと。期待すること。あきらめないこと。
そう思いながら新年を迎える。
≪2009年 2010年 2011年≫